相続税よりも頭を悩ませる問題は「残された家の取り壊し費用」をどこから捻出するかの問題です。例えば、家族構成が父親、母親、長女、次女である場合で、父親が遺言書を残さずに他界し、母親は高齢で入院中。長女も、次女も家を出てしまっている場合で、食料品を買い求めるために、毎日のように車で移動しないと生活が成り立たない地域にある建物ですと、既に「残された家が無価値」になってしまっている場合があります。
この場合の相続や取り壊し費用についての費用の捻出の方法です。建物がある自治体の公団物件に登録。「住みたい」という希望者がいれば0円で譲ってしまう。どちらも遺品整理を済ませておく必要があります。0円で譲るのが嫌であれば、「後に住む希望者」が相続人に家賃として毎月いくらか払う仕組みをつくる手もあります。手間がかかるのであれば、相続人が一括で数百万単位で先にお金をいただいて、後は永年無料にしてしまいましょう。現金の遺産が1500万円ほどある場合、母親が高齢で入院中。長女も、次女も家を出てしまっているのであれば、まず、父親の死後3ケ月以内に、現金の分配を済ませましょう。法定財産分与比率に従って、まず、1500万円の遺産を、母親に1000万円、長女に250万円、次女に250万円分与します。財産を分与する際に「母親への遺産のうち半分は家の維持費に充当してもよい」と一筆書いておけば、母親の死後ではなく生前からも効果を発揮します。
「取り壊す予定」なのであれば、入院中の母親が退院後戻ってくる場所がなくなってしまいますからね。母親の死後、余ったお金があれば、家の維持費に回すことができます。「もらった遺産の中からいくらか維持費を出そうか」と提案してみるのもよいですね。母親の四十九日以降、遺産が余るようであれば、分けられる人が分けてもよいという仕組みを作っておきます。それでも後に残る遺品等は全部姪っ子のもの。ブランドバッグ、洋服、楽器、書物、古いLPなど姪っ子に譲るには惜しい品目は生前に実家に立ち寄った際に少しずつ移動させておくのも手です。